5. 観てみよう!
芸術の都パリでは、さまざまな芸術作品を間近で目にすることができます。もちろん歴史的建造物でもある美術館・博物館や劇場そのものが観光名所にもなっていますが、せっかくならその建物の中に入って、美術品やお芝居を見てみましょう。
1.観光スポットと美術館
パリの観光スポット
フランスは世界一の観光客受け入れ国です。特に首都のパリはフランスに興味のある方なら必ず訪れたい都市ですよね。パリのセーヌ河にかかるPont de Sully (シュリー橋) からPont d’Iéna (イエナ橋) までの約8キロの間は「パリのセーヌ河岸~セーヌ河岸の歴史的建造物群」という名称で世界文化遺産に登録されています。エッフェル塔、シャンゼリゼ大通り、ノートルダム大聖堂など、一度は名前を聞いたことがある有名観光スポットが数多く存在します。
2023年のラグビーのワールドカップ、2024年のパリオリンピックを控え、現在パリでは様々な歴史的建造物の修復が行われています。例えば、パリ最古の教会であるサンジェルマン・デ・プレ教会はほぼ200年ぶりに内部の大修復が行われました。ロマネスク様式の教会の外観は質素ですが、内装は全面的に修復され、過去の鮮やかな色彩を取り戻しています。2019年に火災で大きな被害を被ったノートルダム大聖堂も当時修復工事中でした。現在は修復工事現場の柵ごしに外観を見学することができます。
ご存じのようにパリは芸術の都と呼ばれ多種多様な美術館・博物館が存在します。モナ・リザやミロのビーナスで有名なルーヴル美術館、モネの「水連」を展示するオランジュリー美術館、中世好きにはたまらない「一角獣と貴婦人」のタピスリーを所蔵するクリュニー美術館など枚挙にいとまがありません。パリの美術館は、所蔵されている美術品はもとより、建築物としてもすばらしいものがたくさんあります。ルーヴル美術館は大革命前までは国王の宮殿でした。オルセー美術館は使用されなくなった駅舎を再利用しており、広い吹き抜けの館内が印象的です。ピカソ美術館は17世紀の面影を残すマレ地区の塩税徴収官の邸宅を改修したもので、古典的建築にピカソのアートが見事に融合しています。ポンピドゥー・センターは一般的な美術館のあり方を覆す現代アートのシンボル的存在で、建物自体が現代アートを体現しています。パリ市は山手線の中に入るほどの広さで、徒歩2時間もあれば東西を歩ききることができるので、街の散策をかねて美術館をめぐるのもいいですね。美術館のギャラリーではおみやげにできそうなグッズが見つかるのもありがたいところです。
ここで美術館巡りがお好きな方に耳寄りな情報を一つ!フランスでは著作権法の対象となるコンテンポラリー作品をのぞき、個人使用に限って、美術品や建物の内部の写真撮影が一般的に許可されています。写真撮影についてはフラッシュなしが原則ですが、「スマホで撮ること」など細かい条件があるので、マナーとして入場前によく確認しておきましょう。
・パリとパリ近郊の世界遺産についてまとめたサイトです:
https://worldheritagesite.xyz/paris/
・ドローン撮影したパリで旅気分を味わってみましょう(^^):
ミュージアムパスを活用しよう!
素晴らしい芸術品を観て写真も撮り放題!といいことずくめのように思えますが、観光スポットの入場料は、ルーヴル美術館17€、凱旋門12€、ヴェルサイユ宮殿20€と、けっして安くはありません。美術館や観光スポットめぐりが旅のメインイベントだと思っていても、限られた予算の中で食事も楽しみたいし、おみやげも買わなきゃいけないし…と悩むところです。そんな時便利なのが、一定期間内に美術館や観光スポットを好きなだけ見ることができるパリ・ミュージアムパスです。「パリ」「ミュージアム」と名前がついていますが、このパスはパリ市内だけではなく、パリ近郊(ヴェルサイユ宮殿、フォンテーヌブロー宮殿、シャンティイ城等)の主要な美術館と観光スポット約60か所で使うことができます(1か所につき使えるのは1回のみです)。ミュージアムパスをもっているとチケット購入の長い列に並ぶ必要がないので時間の節約にもなります。限られた予算と時間で、できるだけ多くの観光スポットを観たい方にはお助けアイテムですね。
パリ・ミュージアムパスは2日、4日、6日の3種類です。4日間のパスだと使い始めて丸4日(96時間)使えます。有効に使うために、どんな観光スポットをどの順番で観るか、それぞれのスポットの休館日等のチェックも含めて、事前にしっかりプランニングしておくといいですね。パリ・ミュージアムパスはネットまたはパスが使える現地の観光スポットや空港でも購入できます。定価は2日パスが52€、4日パスが66€、6日パスが78€です(2022年5月現在)。安く購入できるサイトもあるようです。
・パリのおすすめ美術館をまとめて紹介しています:
https://www.tripadvisor.jp/Attractions-g187147-Activities-c49-Paris_Ile_de_France.htm
・パリ・ミュージアムパスの日本公式サイト:
2.お芝居
フランスと日本の演劇
その昔、日本の演劇界は、フランスの演劇に大きな影響を受けました。日本演劇界の大御所である文学座、今はなきテアトル・コメディ、そして今でも人気の劇団四季がこぞってフランス演劇を上演したのです。モリエールやラシーヌの古典的作品だけでなく、ジロドゥやアヌイの戯曲、そしてベケットやイヨネスコの不条理劇までもが翻訳され、上演されました。けれども、不条理劇以降、フランス演劇界は古典的作品を現代的に焼き直すことが主流であったのに対し、新進気鋭の劇作家が多く誕生した日本の演劇界ではオリジナルの戯曲が中心となり、フランス演劇への関心が失われていきます。そのため、現代の日本においては、フランス演劇を実際に観る機会はあまりないかもしれませんね。ならば、ぜひフランスで観劇を!
古典劇?現代劇?それともオペラ?バレエ?
フランスの伝統芸能である古典劇を観るなら、やはりコメディ=フランセーズでしょう。ルーヴル美術館の近くにある国立劇場コメディ=フランセーズ(通称テアトル=フランセ)は、コメディ=フランセーズ劇団の本拠地です。コメディ=フランセーズ劇団の歴史は非常に古く、なんと1680年にルイ14世の命により、当時パリに2つしかなかったゲネゴー座とブルゴーニュ座が統合されたものです。特にゲネゴー座はフランスの代表的喜劇作家モリエールの劇団の後身です。そのため、コメディ=フランセーズ劇団はモリエールの演目を得意とします。ということは、300年以上前の作品が今でもこのテアトル=フランセで観ることができるということです。その他、ラシーヌ、コルネイユ、マリヴォー、ヴォルテール、ユゴーといったそうそうたる劇作家の戯曲が演じられており、そのレパートリーは3000を超えるそうです。ぜひお気に入りの演目を見つけて、テアトル=フランセに!
現代劇に興味があるのならオデオン座はどうでしょうか。リュクサンブール公園の近くに位置する劇場オデオン座は、もともとはコメディ=フランセーズ劇団の劇場として、マリー・アントワネットの臨席のもと開場しました。1990年以降は、コメディ=フランセーズから離れ、ヨーロッパ劇場として知られるようになります。現代では優れた劇作家・演出家のオリジナル作品がかけられることが多いです。2012年まで芸術総監督を務めたオリビエ・ピィや、ジョエル・ポムラといった世界的に有名な劇作家・演出家が在籍していました。古典劇にはない斬新な作品に興味があるなら、ぜひオデオン座へ。その他にも、イヨネスコ劇専門のユシェット座やミュージカル専門のシャトレ座、ゾラの作品にも登場するヴァリエテ座など多くの劇場がパリにはあります。また、フランスの演劇界は、日本の能・歌舞伎・文楽の文化的価値を大きく評価し、現在でもこれらの演目がフランスの劇場で上演されることがあります。
オペラやバレエに興味のある方は、オペラ座へ。オペラ座には、パレ・ガルニエ(通称オペラ座)とオペラ・バスティーユがあります。パレ・ガルニエはナポレオン3世のパリ大改造計画の一環として1875年に、オペラ・バスティーユはフランス革命200年を記念し1989年にバスティーユ広場に出来上がりました。いずれの劇場でも、歴史あるパリ国立オペラ団のオペラやバレエを観ることができます。パレ・ガルニエの天井に描かれたシャガールの絵もお勧めです。間近でシャガールの絵を見たい人は天井桟敷席へ。
・コメディ=フランセーズのHP:https://www.comedie-francaise.fr/
・オデオン座のHP:https://www.theatre-odeon.eu/
・オペラ座のHP:https://www.operadeparis.fr/
観劇の際の注意点!
・フランスでは、基本的に上演される劇(特に古典劇)の戯曲を読んで、観劇することが多いです。あるいは、初等、中等教育において、すでに戯曲を読んだことがある可能性があります。フランス語に自信のある方でも、お芝居では普段の会話とは異なる表現(特に韻文)を使うことがありますので、戯曲を読む、最低でもあらすじは知っておいた方がよいでしょう。
・チケットはネットでも買えます。最近では、舞台の見え方を表示しているところや、舞台の見え方によってカテゴリー分けをしているところもあります。場所はよさそうなのに安いチケットは、壁や柱や楽団などで舞台が見えにくい席かもしれません。
・人気の演目の場合、早々にチケットが完売していることがあります。当日、開演前にキャンセル待ちチケットの販売を行うことがありますので、事前に情報をチェックしておくとよいでしょう。
・オペラ座の天井桟敷席(格安で約5ユーロ程度)は、ネットでは購入できません。
・学割がきくところも多いので、国際学生証などを準備していきましょう。
・服装については、席やカテゴリーによってはカジュアルすぎる服装は避けた方がよい場合(特に一等席などの高い席)もありますが、長い演目もありますので疲れない服装がお勧めです。天井桟敷席などの安い席では、かなりラフな格好の方が多いので、スーツやドレスだとかえって浮いてしまうかもしれません。