8. パリ郊外に行こう

パリには数多くの魅力的な観光名所があります。全部見て回りたいところですが、どこに行っても人だかりで気疲れすることもあるでしょう。そんな時は、パリ郊外へ出かけてみてはどうでしょう?ここでは、人いきれで疲れたときにおいしい空気を吸える、いくつかのおすすめスポットを紹介します。

 

1.鉄道のチケット

 パリに一定期間滞在しさまざまな界隈を巡るのであれば、定期券ナヴィゴ(Navigo)の購入がおすすめです。ナヴィゴは、イル=ド=フランス交通が運営する地下鉄・RER・トラム・バスに共通して使えるチケット。ナヴィゴの特徴はゾーン制です。パリ(ほぼ20区内)をゾーン1として同心円状に広がる5つのゾーンに分けられており、選択するゾーン数によってチケットの値段が変わります。

もちろん一回券から買うことができますが、滞在日数や移動範囲に応じて、一日券(当日夜の12時まで)、一週間定期券(月曜始まりで固定)、一か月定期券(各月1日始まりで固定)から選ぶとよいでしょう。他にも、26歳未満が対象の週末・祝日限定一日券や、ゾーン3まで限定の一日~五日券もあります。パリとその近郊は観光地が密集しているので、短期滞在の旅行者向けにさまざまな種類のチケットサービスが提供されているのです。ただし、空港駅(シャルル・ド・ゴール空港、オルリー空港)は通常のゾーンとは別扱いになる場合があるので注意しましょう。

購入には身分証明書(パスポート)と証明写真があればOK。インターネットから購入可能ですが、もちろん現地の駅でも作ることができます。

 

2.サン=ジェルマン・アン=レー

 ゾーン4にある、RERのA線の終点のひとつ、サン=ジェルマン・アン=レー駅。パリから約30分です。駅を降りてすぐに出迎えてくれるのがサン=ジェルマン・アン=レー城です。ルイ6世の時代からルイ14世の時代まで、国王の主要な居城の一つとして機能していました。場内には 国立考古学博物館が設けられています。

  サン=ジェルマン・アン=レー城のさらに少し先を歩いていくと、広大な庭園、そして森があります。庭園は、テュイルリー宮殿やヴェルサイユ宮殿の庭園の設計でも知られるル・ノートルの手になるものです。テラス・ル・ノートルと呼ばれる高台(全長約2,400m!)からセーヌ河岸の広大な景色を眺めながら並木道を歩くのもよし、小鳥の囀りを聞きながら鬱蒼と茂る木々に囲まれた裏道(といっても、歩きやすいように整備されています)をたどるもよし。とにかく広いので、たとえ駅周辺がいくらか混雑していても、森までくれば伸びのびできます。日の光を浴びながらのんびりお昼寝などいかがでしょう。

 

・サン=ジェルマン・アン=レー市が運営するサイトでも、庭園・森が紹介されています。

https://www.saintgermainenlaye.fr/143/nature.htm

3.セーヌ川と印象派

日本でも人気が高い印象派の画家たち。ルーヴルやオルセー、マルモッタンといったパリの有名美術館で作品を鑑賞したら、彼らが描いた実際の風景を見に行ってみませんか?

19世紀にはイギリスに続いてフランスにも鉄道が走りました。パリのブルジョワたちや労働者たちは週末、疲れた体を癒しに鉄道で郊外に繰り出します。一方で画家たちは、持ち運びできるようになった画材を携えて、日の光に揺れる川面や河辺で楽しむ人々を描きました。セーヌ川沿いの所々にその風景を描いた絵画のパネル展示もあり、百年以上前の画家が見たのと(ほぼ)同じ景色を楽しむことができます。そうしたスポットはセーヌ川沿いに点在していますが、そのうちからルノワールとモネに縁のあるコースを一つ挙げましょう。

RERはA線に乗り、シャトゥー=クロワッシー駅まで約30分。駅を出ると印象派公園があります。シニャックやスーラ、そしてゴッホといった画家たちがこの辺りの風景を描いていることから名付けられています。駅からセーヌ川沿いを北上すると、ルノワールやヴラマンク、モネのパネルが現れます。逆に駅から南下していくと、モネやルノワール、ベルト・モリゾが見たであろう風景が目に飛び込んできます。この道筋にある、実在した水上カフェ兼酒場にちなんで建てられた「グルヌイエール(蛙の棲む沼地)」美術館は、川沿いでの遊興を描いた作品はもちろん、当時のダンスパーティーのポスターもあります。19世紀のフランス人に思いを馳せながら、セーヌ川沿いでピクニックを楽しむのもよいかもしれませんね。

 

・印象派ゆかりのセーヌ川沿いのスポットを紹介しているサイト

https://www.seine-saintgermain.fr/fr/nos-pepites/nos-incontournables/seine-sur-les-flots/chemins-des-impressionnistes/

・グルヌイエール美術館のサイト

https://www.grenouillere-museum.com/grenouillere/

4.ダニ・カラヴァンの「大都市軸」

ダニ・カラヴァンはイスラエル出身の彫刻家ですが、通常の「彫刻」のイメージには収まらない壮大なスケールのランドアートの作品を残しています。そんな彼の代表作の一つが、セルジー・ポントワーズにある「大都市軸Axe majeur」です。RERのC線でゾーン5にあるセルジー・サン=クリストフ駅が最寄り駅。パリから約50分ほどです。駅から南へ10分ほど歩くと、高さ36mの「展望塔」が出迎えてくれます。ここから3,2kmにわたって12のスポットが、「大都市軸」の名の通り、パリの中心部の方向に(微妙に角度をずらしながら)連なっています。歩を進めると12本の白い列柱があり、眼下にはオワーズ川、はるか彼方にラ・デファンス、エッフェル塔も見えるかもしれません。9つの真っ赤な巨大アーチが並ぶ橋をわたると「天文島」があり、左手に白いピラミッドも見えます。12のスポット全てについてここでコメントできませんが、冷たく幾何学的な形態と生命力に溢れた自然が一体となった空間を歩いていると、異世界に迷い込んだような不思議な気持ちになります。しかし傍らでは、犬の散歩をしている人もいればジョギングをしている人もおり、ピクニックをしている人がいれば水上スポーツを楽しむ人も。現代アートの作品がそのまま地元の人々の憩いの場ともなっているのです。

 

・大都市軸Axe majeurのサイト

https://www.axe-majeur.info/

5.フォンテーヌブロー宮殿(Palais et parc de Fontainebleau)

フォンテーヌブロー宮殿はパリから南東65kmのセーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne)県にあります。フォンテーヌブロー城とも呼ばれフランスで最も大きな宮殿で、1981年には世界遺産に登録されています。フォンテーヌブロー宮殿に行くには、パリのリヨン駅(gare de Lyon)からTERのD線に乗ります。最寄りのFontainebleau Avon駅まで快速で35分、各駅停車だと1時間ぐらい、駅からはバスの1番線に乗って15分程度でChâteau停留所に着きます。ちなみにNavigoのゾーン5で交通パスを作っておくとここまですべてカバーしてくれます。

フォンテーヌブロー宮殿と言えば、16世紀のフランスルネッサンス発祥の舞台として有名ですが、元々は12世紀ルイ7世の時代に作られた城塞でした。城の周りには豊かな森が広がり、歴代の王のお気に入りの狩場になっていました。16世紀になると時の国王フランソワ1世が大幅な改築を行い、現在のフォンテーヌブローの姿に近づいていきます。ブルターニュのジルによって、南門「黄金の門(Porte Dorée)」を含む「楕円宮廷(Cour Ovale)」の建物のほとんどが建築され、宮殿の内装や庭にはイタリアのマニエリスムが取り入れられました。幾何学模様を図案化したフランス式庭園が初めて造られたのもこの宮殿です。 

ルネッサンス期を過ぎ、ブルボン王朝の居城がベルサイユ宮殿に移った後も、フォンテーヌブロー城は王族が夏を過ごす重要な場所でした。ルイ16世妃マリー・アントワネットも国王や重臣と共にこの地で夏を過ごしています。革命期が過ぎても、フォンテーヌブロー城は多くの王族や時の支配者に愛され続けました。ナポレオン1世が自然豊かなこの城を気に入り自分好みに改築して居城としたのは有名な話です。

フォンテーヌブロー宮殿はルネッサンス以後も、時代に応じて何度も改築・増築が行われ、特に内装には、フランソワ1世、マリー・アントワネット、ナポレオン1世等、その時代の主の好みを表す美術様式が反映されています。現在のフォンテーヌブロー城の内部は美術館になっており、16世紀~19世紀の様々な建築様式、宮殿内部の美術品や室内装飾を拝観することができます(ちなみにミュージアムパスで入ることができます)。

豪華絢爛な宮殿は見どころ満載ですが、自然に囲まれたフォンテーヌブロー宮殿はベルサイユ宮殿とは一味ちがった楽しみ方もできます。宮殿の庭園や池の周りの散策は心が落ち着きますし、かつて王族の狩場だったフォンテーヌブローの森まで足を延ばすのもいいですね。フォンテーヌブローの森は砂岩の岩場が多く、ボルダリングの聖地となっています。トレッキングコースや乗馬などのアウトドアスポーツ設備も充実しているようです。印象派の先駆けとなったコローやミレーが描いたバルビゾン村もすぐ近くにあり、美術好きな人は一日過ごしても足りない場所になりそうですね。

 

・フランス観光開発機構のサイトです。外部リンクが多数掲載されています:

https://jp.france.fr/ja/paris/article/92637

・Youtubeで旅気分を味わってみましょう:

https://www.youtube.com/user/ChFontainebleau/playlists